薔薇屋敷

五月十九日(土)晴後陰
七時起床、お召の着物で九時家を出づ。十一時より一如庵にて尺八稽古。大和樂、布袋軒鈴慕の後越後三谷三回。辞して早稲田駅にちN子と落合ひ、馬場下町すず金にて鰻重を食す。其れから地下鉄を乗り継ぎ練馬に到り、徒歩K先生宅に着く。二時より花盛りの薔薇を愛でる催しなり。庭一面に所狭しと立ち並ぶ薔薇は見事の一言であり、K先生の丹精の程が伺はれる。種類の豊富な事は驚くばかりで、風が吹けば薔薇の香りが一面に漂ひ、酔ふやうな気分になる。






今回最も気に入つた「ガブリエル」
K先生夫妻の他、東大名誉教授で現在海洋研究開発機構にをられる地質学を専門とするT先生、聴覚の専門家S先生、触覚の専門家Y先生夫妻、心理学専門で情動を研究するH先生夫妻等の方々が参会。皆さん著作もあり大学で教へてもをられる先生方で、T先生以外は今までに何らかの形で講演や研究会でご一緒させて戴いてゐる。此の中では一応余は嗅覚や香りの専門家として扱はれてゐる訳である。話題も知識も豊富な方々であり、感覚の問題から分子生物学と「意識」の問題まで歓談に暇なし。楽しく喋り美味しい料理を頂くうち時間は過ぎ去り、気がつけば早や五時過ぎになれぬれば辞す。練馬駅に戻る途上、往きに見つけた古書肆に立ち寄り三冊程購ふ。其の後帰途に就くも帰宅は七時半を過ぐ。