枯山水・茶室・三門

六月五日(火)陰
七時半起床。九時前ホテルを出で地下鉄にて蹴上に到り、徒歩南禅寺に向かふ。金地院を初めて拝観。今まで南禅寺は何度となく訪ねてゐるし、隣の天授庵などは数回拝観してゐるのに、何故か不覚にも此処は訪ねずにゐた。今回偶々僅かの時間を得てやつと拝観の機会を得る。特別拝観の分を含め千百円を払ひ、明智門をくぐつて目の前の弁天池に咲く睡蓮を眺めて左手に池泉を廻る。平日の午前中のせゐか閑散としてをり、久々の禅寺に心は次第に静けさを取り戻す。東照宮を見てから方丈前の小堀遠州作鶴亀の庭に至る。今回デジタルカメラを持ち來たるのを忘れたのだが、流石に見るだけでは惜しい気がして携帯電話のカメラに収める。石は結構多いのにうるさい感じの全くない見事な枯山水である。暫くして九時半となり、特別拝観のガイドが付き、方丈の説明から始まり、本堂の山岡鉄舟による扁額を見上げた後奥に通され海北友松や長谷川等伯の襖絵や屏風絵を観る。客は余の他に一名のみなればじつくりと見るを得る。更に進んで遠州作の茶室八窓席を見る。座敷からにじり口に入るところや、水屋を挟んで裏にもくだけた茶室があるなど構成面白し。室内も天井が低くて窓が多く、独特の採光にて奥床し。また隣室の奥行のない簡易な床に影をわざと作つて奥行を感じさせたり歪みのある柱を使つたりと造作に工夫があり、参考になる。庭の拝観とガイド付の特別拝観合せて一時間ではあつたが、充実した見学であつた。
金地院を出て、庭をもうひとつ見るには時間が足りなかつたので、思ひ立つて南禅寺三門に登つてみる気になつた。五百円を払つて急な階段を上り楼上に出る。思つた程高くはないが天授庵や南禅寺方丈や法堂の甍を見下ろせば其の佇まひに整然たる美を感ず。東山に近い為大徳寺妙心寺とはまた異なる趣である。三門を降り再び地下鉄にてホテルに戻り、荷物を受け取つてから三たび地下鉄に乗り山科に至る。駅前にて少憩の後会社の連中來たれば合流し、昼食の後得意先を訪ねて香水トレンドに関するプレゼンテーシヨンを為す。相変らず反応なく力が抜ける。其の後京都駅まで営業の車にて送られ新幹線にて帰浜。帰宅後やはり尺八を吹きたくなり小一時間吹く。良い演奏をたくさん聴いた影響か、いつもより音がよく出てゐたやうに思ふ。