茶と花火 

十月二十日(土)晴
午前中嶺庵の掃除と衣更へを為す。晝前一人家を出で電車を乘り繼ぎつくし野に至る。岳父が車で迎へに來て呉れ家人の實家へ。丁度午前中の稽古が終はり皆で晝食を取る際中にて余も加はつて晝食と為す。薄茶一囘、包み袱紗一囘点前の後四時前辞して成瀬驛より橋本に出で、京王相模原線に乗り換へ國領に向ふ。相模原線は余が小學校の頃多摩センターまで開通し早速に乘りに出掛け、當時は橋本までの全線開通を心待ちにし居りたるも、其の後鐡道に興味を失ひたる結果今囘が此の區間に乘る初めての機会なり。又、調布驛周辺の路線が地下化されたる事を初めて知り驚く。思へば余が鐡道好きであつた少年の頃より既に四十年に近き星霜を経る。變化の甚だしきを思へば轉た帳然たり。國領驛改札口にて家人と落ち合ひ徒歩K氏宅に向ふ。住宅街を歩む事十數分にて道路寄りの玄關前にK氏既に小卓を前に座して客人と倶に麥酒の盃を傾けつつあるを見る。久闊を叙して余等も其の席に連なる。其の後もK氏の招きし客参集し、酒肴を倶にして待つ事小一時間にて調布花火大会始まる。多摩川の河原にて打上げるものにて、川に近き高台に在るK氏宅前からは丁度見易き高さに花火の広がりを目に収むるを得る。好立地と言ふべし。さらに此の日は五日の月が出てをり、月を背景に儚く光る花火の姿も趣あり。七時、花火大会終はり、邸内に入り家人の元同僚等と談笑九時半に到り辞し、澁谷経由で歸途に就く。十一時半過ぎ歸宅。