骨董と端唄 

十月二十一日(日)晴
宿醉殘り睡氣甚しき中何とか起床。入浴の後着物に着替へ九時半過ぎ家人と家を出づ。電車にて有樂町に至り、大江戸骨董市を覗く。家人は扇子形の文鎮、余は舟形の水滴と印傅の名刺入れを購ふ。又、三味線の撥の形をした小さなストラツプ状の提げ物あれば購ひ印傅の合切袋に付ける。遅めの晝食をとつた後電車で四谷に移動し、徒歩紀尾井ホールに至る。二時半より本條秀太郎さんの端唄の会。秋らしい選曲にてあの艶のある美声と絶妙の撥さばきによる三味の音を堪能す。七時歸宅。夜半平山廬江著『三味線藝談』讀了。江戸音曲への耽溺は暫く續きさうである。