蓄音器

一月十六日(水)陰
昨夜、正岡容著『定本日本浪曲史』讀了。定価で壱萬壱阡五百圓もするのでとても買へず圖書館で借りて讀んだものである。列傳の形で浪曲師たちの解説がなされ、その合間に當時の状況やら私的な思ひ出含め綴られたもので、明治以来の浪曲界といふものがざつと理解できたやうに思ふ。特に大西信行による「正岡容以後」の追記は、昨今の状況や現在活躍中の浪曲師にまで話が及んでゐて勉強になつた。
もつとも、昔の浪曲師のものは古いレコードなら多少は出廻つてゐるのだらうが、CDにはなつてゐないと思はれるので、昔の人のを聞きたいと思つたらレコードプレーヤーが必要になる。まだそこまでの熱意はないが、浪曲に限らずレコードの音が懐かしく、いつかまた聴きたいと思ひ始めてゐるのは確かである。平岡正明師匠のやうにオーデイオに凝るつもりはないが、昔のステレオセツトのメカや音の質感への郷愁であらう。レコードを聞くだけなら壱萬圓出さずともプレーヤーは買へるが、ちよつと良いのになると六・七萬する。レコード自体も場所を取るし、まあ憧れだけで終るのだらう。