邦楽と木石花

三月二十三日(土)晴後陰
初めて東横線からそのまま副都心線に乗り入れ西早稲田で降り、徒歩一如庵に赴く。徒歩二十分ほどかかるが、それでも今までの行き方よりも早い。今後はこの行き方にしようと思う。十一時より尺八稽古。十二時辞していつもの夏目坂の吉野家に行こうとしたら無くなっていた。やむなく大学近くの定食屋で昼食の後、喫茶店で本を読んで時間を潰す。この日のうちに『立川談志自伝‐狂気ありて』読了。談志の意外なほどの家族思いに驚く。奥さんも娘も息子も溺愛に近い。
三時半前移動して国立劇場へ。四時より邦楽演奏会第二部を聞く。演目は常盤津義太夫、新内、筝曲、清元、宮薗、長唄の順。自分でも驚くほど好みがはっきりしてきた。まず常盤津はすぐに寝てしまった。義太夫は女流で、文楽と比べてはいけないのかもしれないが、三味線は面白く聞いたが声量が足りず、全体として物足りない。少なくとも女義太夫に対する好みはない。新内は岡本宮之助師匠の浄瑠璃も新内らしい三味線の音も、痺れるような楽しさ。筝曲「秋の曲」は、桜満開の今なぜこの曲なのだと思っているうちにまた寝てしまった。川瀬順輔師による尺八も余り冴えていなかったように思う。休憩が入って後半最初の清元も寝こそしなかったが何とも印象に残らない。次の宮薗は、去年の暮れに続いて小春治兵衛炬燵の段を再び聞いたが、前回よりさらに痺れた。三味線の音は宮薗が一番好きかも知れない。うっとりと聞き惚れた。と同時に、桃山晴衣の宮薗を生で聞きたかったとつくづく思う。あんまりうっとりしてしまったので、次の長唄はもともと好きな方ではないから、聞かずに国立劇場を後にした。やはり新内と宮薗、文楽義太夫そして端唄が私の好みであるらしい。逆に歌舞伎的な音曲は苦手のようだ。
急ぎ帰宅し、夕食の後は明日客を迎えるため嶺庵の片付や床の間飾りなどに時間を費やす。床の間は、水石、香木、桜花の木石花。軸は宮島詠士先生。就寝十二時。