三つの到着

四月七日(日)晴風強し
此の日待ち望んでゐた三つの荷物が届いた。ひとつは『宋四家字典』。二玄社刊で、ずつと欲しかつたのだが、版元品切とのことで思ひ切つて古本で買ひ求めたもの。宋四家とは言ふまでもなく、蘇軾、蔡襄、黄庭堅、米芾を指す。此の四人の書から集めた字典であり、余の手本とすべきものではあるが、見てゐるだけで樂しい。
ふたつめはCDで、ピグミー族の音樂を収めた『密林のポリフオニー』。これは今讀んでゐる大橋力『音と文明』で取り上げられてゐて興味を持つて註文したもの。期待に違はぬ素晴らしい音樂で、打楽器の刻むリズムの格好良いのと魂を揺さぶられるやうな多重の声に圧倒される。
最後が、骨董オークシヨンで落札した唐木飾り棚である。京都から移送されて來たのだが、当初運送業者は玄関先までしか運ばずと聞かされてゐた。五十肩の余には家の中で移動させることは無理に決まつてゐるから、會社の同僚K氏に助けに來てもらつたのだが、實際には當然の如くに中まで運んでくれた。此れには大いに助かつた。流石はヤマト運輸大和魂である。嶺庵に運んで貰つた訳だが、やはり埃だらけでまづは掃除が必要であつた。わざわざ休日返上で來て貰つたK氏も手伝つてくれ、三人がかりで磨き上げる。予想よりも大きいが、冩眞で見るよりも細部の趣向が細かく、惡くない。早速棚に香木や香炉、水滴などを飾る。大判の法帖までは入らなかつたが、棚や抽斗には結構色々なものが収納できた。嶺庵の東面が俄かに中國文人趣味に變じたが、大いに滿足の買物であつた。