匂ひ懇談会

六月十三日(木)雨
終業後雨の中品川に向かふ。七時より匂ひや臭氣に興味を持つ異業種の人々の飲み會に参加。自動車用空調メーカーや製缶屋さん、洋酒メーカーからスパイス屋さんまで様々な業種の計十一名の面々也。初めて會ふのはうら若き女性一名のみにて後は顔見知りなれば談論風發、愉しく時を過ごす。京都出身にて文樂のチケツト手配ではいつも世話になりたるT氏には、今週末行く京都でのお勧めの店をその場で予約して貰ふ。T氏は煎り酒を紹介して呉れた恩人でもあり、其の席で余は煎り酒の素晴らしさにつき熱弁を奮ひ、以て煎り酒普及の一助と成らん事を期す。又、匂ひ關係の學會の編集委員をされてゐるU氏からは學會誌への寄稿を求められ、先日引き受けし會社のPR誌への寄稿と倶に此の八月は執筆三昧となる予定也。七月は凾館、九月は巴里に出掛ける予定なれば、金はなく諸稽古もなくて時間のみある八月は正に執筆に打つてつけの時期なれば其れも亦善しとすべし。昨年購入せし書斎のエアコンもフル稼働とならう。
九時半過ぎ一人辞して、同じく品川にて友人と會食をしてゐた家人と驛で待合せ、品川から大船までノンストツプの電車にて歸途に就けば思ひの他早くに家に着く。今日は此れ又T氏お勧めの「白州」のハイボールを飲むに極めて美味也。今後家にても飲むべく購入するつもり也。してみればT氏は中々のセールスマンである。いや、味覚の師と呼ぶべきかも知れない。ちなみにT氏はブランデーのブレンダ―だつた方で、香りについてはプロである上、話は面白いし趣味も多彩な素敵な方である。今度新内の公演にでもお連れしたいと思つてゐる。上方文化の良い処をよく知る方だけに少しは江戸の粋をお見せしたいと思ふのである。