巴里の孤獨

九月二十三日(月)陰
黄金町ジャック&ベティで映畫『クロワッサンで朝食を』を観る。ジャンヌ・モロー演ずるパリの高級住宅街に住む狷介孤高な老婆と、その故国エストニアから出て來た家政婦のやりとりを通じて描く、孤獨と、だからこそ通ふ心の動き。實に胸に染みる映畫であつた。ジャンヌ・モローの存在感に壓倒される。孤獨と後悔と矜持、それらと倶に生きるのに巴里ほど似合ふ場所はなく、巴里であればそんな余生を歯を喰ひしばっていくことも納得できるのである。リルケの『マルテの手記』以來、巴里は孤獨を特別なものにする都市であり續けるのである。
歸りに伊勢佐木町の古書肆で岡本文弥の『遊里新内考』を購ふ。夕方寝て夜執筆。