購入

二月二十二日(土)晴
十一時より一如庵にて尺八稽古。其の後白樂ねいろに行きニ尺一寸管購入代金を払ふ。煤竹の一尺八寸管がおまけに付いた他、煎茶道の茶托他諸々購ふ。花台がおまけにつく。店主夫妻と骨董談義で樂しい時を過ごした上に結構安くして貰つたやうだ。
それから横濱中央図書館に赴き調べものを為す。『近代歌舞伎年表京都篇』を見るに明治四十五年に京都南座で切られお富が上演された形跡はなし。前号の通信で書いたことの續きでの調べものである。自分としては楠音と彦の関係や「横櫛」成立事情などは面白いと思つて興奮しながら書いたのだが、大方の讀者の興味をひかなかつたのか、いつもの号よりも反応がなくがつかりであつた。楠香や楠音の生涯、楠音の繪、両者と関係する美人薄命の見本のやうな彦の一生…。これ等は余り一般の興味を惹起するものではないらしい。どんどん面白い情報が集まりつつあるが、後は通信では書かずに自分だけで樂しむことにしやうかと思つてゐる。唯一面白がつて呉れた楠香の孫に當るT・K氏と情報を共有して、彦の生涯を掘り下げたいと思ふ。