決心

十二月十八日(木)晴
熟々考ふるに余は元來調子に乘り易く舌禍も招き易き者なれば、家人とも相談の結果矢張り斷酒することを決意す。酔余の言動の危ふく再び難を為すことを懼れ災厄を未然に防がんが為、酒席の續く此の時期を敢て斷酒とし、來年三月七日を以て酒斷ちの刑期明けとす。此の間身を慎み勉強及び執筆に専念することを期す。又、今余の在るは會社の宥恕の賜物たることを今一度肝に銘じて職務に励む所存也。
飲まぬ事に決めてしまへば余は酒席に在つても案外平氣にて烏龍茶等を口にする而己。諸人の娯樂歓樂の多き時節にこそ、余の如き匹夫は謹慎して控へ居るが上策ならめ。