寝てゐる人

六月七日(日)陰
絶對に來ぬ人を待つて銀座の街頭に立つてゐる。百貨店の入口のやうな處である。待合せなのか私と同様に立つて待つてゐる人が多い。中に知つた顔もあるのだが、互ひに知らぬ顔をしてゐる。來ないのは分かつてゐても、もし來たとしたら彼ら彼女らには知られたくない人を待つてゐたので、私は携帯電話に出るふりをして其の場を離れた。すると携帯にメールが入つてゐるのが分かつたのだが、電池が切れてメールが開けないのである。もしかしたらと思ひながら歸宅するが、家人の手前すぐに開く譯にも行かず、其の儘寝てしまふ。明け方目が覚めて横で寝てゐる家人に「ビリケンさんの夢を見た」と言ふと、それは何か疑はしいと言ふ。私はビリケンには別の意味があつたのかとハッとするが、家人が「私の右に知らない人が寝てゐる」と言ひ出すので見ると、見たこともない女が寝てゐる。私は「誰だ」と誰何しようとするが聲が出ない。からうじてWho are you?と聲を絞り出すと、「お兄さん」と答へる。これは魔物に違ひないと思ひ退散せよと言はうとするが、金縛りになつて聲が出ない。ぶるぶる震へながらやつとのことで、立ち去れと叫ぶと同時に目が覚めた。