梅雨

六月十日(水)晴後陰
梅雨である。皆梅雨に入つたことを憂鬱さうに言ふ。余は日本らしい良い季節になつたと思ふ。すつかり忘れてゐた場所にきちんと紫陽花が咲いてゐるのを見ると、季節の巡りの確かさに驚くやうな嬉しいやうな氣になるのである。湿気の多い気候や雨に濡れることは決して快いものではないが、それでもこの時期雨の日は人に會へば「梅雨らしい良い天氣ですね」と聲を掛ける。冗談だと思ふのか皆苦笑は浮かべるものの同意してくれる人はゐない。