結婚の告知

三月十五日(火)晴
先日會社の若い女性が、まだ皆には公表してゐないのですがと斷はつた上で、近々結婚することを知らせてくれた。偶々廊下で二人きりになつた際に告げたのである。祝ひの言葉を陳べると同時に、皆にさきがけて知らせてくれたことを嬉しくも感じるものである。特に氣に入つて日頃親しくしてゐる子だと、心から幸せを願ふ氣持ちになる。逆に、こちらでは親しくもし可愛いがつてゐるつもりだつた子の結婚を後からひとづてに聞いたりすると急に疎遠に感じ始めるのも確かであらう。殘念ながらさういふ子も何人かゐて、何となく心に蟠りを感ずる。もともと他人ではあるのだが、さらに他人になつたやうな氣がする。それに引きかへ知らせてくれた子は其の後の結婚生活や出産といつたことにも親戚のやうに氣になつたりするから不思議である。