かをりをりのうた 5-bis

十二月十二日(土)陰
塚本邦雄の『新古今新考』を讀んでゐたら、昨日とりあげた歌の「あやめ」は菖蒲のことで、かきつばたの花菖蒲ではないとあつた。そしてご丁寧に「ちよつと樟腦に似た匂ひのあやめが馥郁と香つてゐる、悪魔祓ひの菖蒲が香つてゐる」と解説してくれてゐた。さうなると香りが違ふから歌の讀みもだいぶ變はつて來る。あやめ公園の記憶が鮮明で、古語の用法を調べ直さなかつた私の咎であるが、最初に感じた湿り氣のあるあやめの匂ひの印象は拭ひ去ることが出來ないので、誤りを正すのみで解釋のし直しはしないことにする。