言靈

五月四日(水)晴
午後鎌倉建長寺に赴き金澤翔子さんの書展を觀る。素晴らしい。般若心經の丹精、蘭亭序の品格、いろはの破格、魂魄の氣迫。しかし何と言つても「言靈」の鬼氣迫る力強さに言葉を失ふ。忘れかけてゐた「ことば」への畏敬を思ひ出すに足る、文字と音声言語の根源を感じさせる筆蝕である。茫然と立ち盡し目に涙が浮かぶ。言語への謙虚さを取り戻さねばならない。入口には翔子さんがゐて、圖録を買ふと署名をしてくれる。更に余ら夫婦と翔子さんの寫眞まで撮つて貰つた。嬉しく、我が家の寶物である。建長寺から鎌倉驛まで歩き御成通りに出た處着物姿の如道會のW村君に遇ふ。買物の後歸宅。鎌倉は朝方の風雨のせゐか連休の割には左程混雑してゐなかつたやうに思ふ。
「言靈」
建長寺庭園