淺草早稲田

十月朔日(土)陰
朝九時過ぎ家人と倶に家を出づ。新橋から地下鐡に乘り換へようとすると、SL廣場にて古本市開催中なれば一巡りして杉浦明平『崋山探索』を得る。銀座線で淺草に赴き、雷門の並木藪にて蕎麦を食してから伝法院通りの辻屋本店に行く。黒紋付きに合はせる雪駄を誂へる。南部表は高すぎるので野崎表の白鼻緒のものを購ふ。先日岳父母から名取の祝として頂戴した祝儀とほぼ同額也。其の後淺草寺界隈を歩き白足袋を買つた後余は早稲田に向かひ、家人は神田から國鐡で歸宅。三時より一如庵にて尺八稽古。其の後も近くの公園で吹き、五時より金城庵にて此の八月に亡くなつたY子さんを偲ぶ会。六人出席。余が哀悼の意と冥福を祈る氣持ちを込めて布袋軒鈴慕を吹く。其の後歓談、定年の近づいた故人と同年代の参加者が殘された時間の生き方を改めて考へさせられる一夜となつた。八時過ぎ散会。歸宅後夏目漱石の妻の後半を見る。