ダメ親父

私は見ていないのだが、朝の連続テレビ小説という番組に出てくるのは、たいていどうしようもないダメ親父ばかりなのだそうである。妻と一緒に店を始めようと言い出しても、結局手伝わず、たまに手を出せばひっくり返したりやけどをしたりで、「私がやるから、あなたはもうやらなくていい」となるのだそうである。確かに、わずかな記憶やたまに横目で見るシーンからも、横着で不器用、しかも怠け者、あるいは横暴で理不尽な暴力親父、さもなければ自堕落でクズとしか思えない父、旦那、息子ばかりのように思える。立派な男性はたいてい戦争で死んでしまうか病に斃れるのである。いや、若死にしたためにダメ親父に堕さなくてすんだだけかも知れない。これは一体どうしたことかと思う。家父長制に守られた男性特権に胡坐をかいた男たちを揶揄、あるいは糾弾しようという意図であろうか。おそらくそうではあるまい。毎朝忙しい家事の中でこれを見ている主婦たちが、ウチと同じだ、いやまだウチの旦那の方がマシかも知れぬと思えるよう、すなわち毎日生活に追われる女性たちに僅かな慰撫となるような意図があるのではないか。だとしたら、既存の性役割の刷り込みと強化、そして家父長制の保全・補強にしかならないであろう。これを阻止するには世の中こんなダメ親父ばかりでないと主張すべきなのだが、少なくとも私は自分がダメ親父、ダメ夫であることを自覚しているので、それもなかなか出来ないというジレンマがある。不器用で、手伝うとかえって仕事が増えるので「あんたはやらなくていい」と言われているのは私も同じだからである。