都新聞

一月十日(木)晴
新コこと長谷川伸の自伝を読んでいるのだが、新コが入った都新聞の同僚がすごい。中里介山平山蘆江、そして伊原青々軒である。中里介山の『大菩薩峠』を読んだのは十五・六年前だっただろうか。平山蘆江を知ったのは最近だが、その『三味線藝談』には多くを学んだ。蘆江の有名な花柳小説とやらもいずれ読んでみたいと思う。多士済済の論陣である。もともと仮名垣魯文黒岩涙香が筆を揮った新聞ではあるが、介山、蘆江、伸の三人が同時期に在籍していたとは知らなかった。私の明治に対する知識も知れたものである。それでも、浪曲岡本文弥の新作新内あたりを軸に、文章と口承・話芸・音曲の世界に跨って明治という時代を俯瞰してみたいという気持ちはさらに強まっている。それまで点でしかなかった興味ある人々が繋がり始めると面白くて仕方なくなるのは当然であろう。ちなみに、横浜時代に長谷川伸は桃中軒雲右衛門とも牛鍋屋で酒を酌み交わしている。明治何年というよりも、そういうことの有り得た時代というものを私は妙に羨ましく思うのである。