仙洞御所

十月二日(木)陰
朝七時過ぎ家を出で新幹線にて京都へ。着いてまず驛の京都総合観光案内所に行き着物パスポートを貰ふ。それから烏丸御池の定宿に往き荷物を預けてから尾張屋まで歩き早めの晝食。余はざる蕎麦、家人は利休蕎麦を食す。相変はらず美味也。夷川通りを寺町通りまで東進し店を見歩く。さらに寺町通りを北上。途中、この処近くを通る度に寄る下御霊神社にて名水をペツトボトルに汲んでから京都御苑に入る。時間に余裕があつたのでベンチで小憩の後一時十分に仙洞御所に赴く。入口で拝観許可証を見せ、中の受付でさらに身分証明を見せてからすぐ脇の待合室に入る。十分後にビデオで案内が始まり、一時半より見学が始まる。案内説明役が一人で見学者は三十名ほどか。御所や建物の歴史的な説明及び庭園の見所の解説など流石に的を得てゐる上丁寧にして、要所にて寫眞撮影の時間もあれば、充實した見学となる。江戸の大名庭園とは自ずから興趣を異にし、奥床しくも典雅な風趣あるは流石に平安以來の都の風格を感じさせるものあり。今囘の見学は、京都旅行の日程を組むに當つて偶々宮内庁のホームページにてネツト申込みを試みたところ此の日に空きがあつて實現せしもの也。今後は御所、修学院離宮桂離宮も是非見学してみたきもの也。
大宮御所

仙洞御所池景

仙洞御所池景2

仙洞御所州浜

仙洞御所醒花亭
約一時間程の見学を終へ、蛤御門から烏丸通りに出て京都放送の前でタクシーを拾ふ。それが何とレクサスLS600Lの個人タクシーで、タクシーでは日本でも數台しかないといふ。自動ドアではなく運転士が開ける。黒塗りで中は當然総革張りで快適此の上ない。料金自體は普通のタクシー料金と変らず、贅沢な氣分で大徳寺塔頭孤篷庵近くまで走る。紫野高校脇を通つて大徳寺からだいぶ離れた孤篷庵に至る。前に団體客が入つたらしく暫く待たされた後拝観。小堀遠州建立でその隠居所でもあつたらしいが、此処も滅多に公開しない寺で寫眞撮影も許可しないのである。茶室も其処から眺める庭の景色も流石に素晴らしいが、大徳寺の特別公開寺院は寫眞不許可が多くてケチ臭い。茶ヅラといふより大徳寺の方が余程銭ヅラな感がある。
歸りは真直ぐ北大路通りへ降りて、更に渡つて船岡山公園に初めて足を踏み入れる。小高い丘といふ趣きだが、眺めは思ひの他よろしい。建勲神社にも初めて参拝。其の後バスにて京都市役所前まで下り、再び寺町通り界隈の骨董店等見た後是復た尾張屋に歩んで早めの夕食と為す。余は鰊やだし卷玉子を肴に伏見の酒富翁を飲み、利休蕎麦で〆とす。徒歩宿に戻り早めに就寝。

船岡山から大徳寺山門を望む