冬の一日

十二月二十三日(火)晴
終日家に在り。書齋にて讀書執筆に時を過ごす。本來かういふ生活を望んでゐたのである。随分と遠廻りをして來たが、やつと落ち着くべき處に辿り着いたやうである。資料となる文献に目を通し、メモを取り、原稿用紙に向かつて萬年筆で文章を書く。途中調べる事があつて書棚から取り出した本を讀み始めて暫し其の讀書に時を忘れる。さうするうち、玄關のベルが鳴つてまた新たな書物が届き、梱包を解いてこれもまた讀み始めずにはゐられない…。功名心もないし、執筆で生活を賄ふ積りもないから、自分の興味と好奇心のみを頼りに書き續けるだけである。今は其れがとても樂しく、本當に幸せに思へるのである。