音の力

深津絵里という女優がいる。魅力的な女性だと思うが、昔からわたしはどこか痛々しい感じがしていた。今朝、爪を切っていてその理由がわかった。「深爪」を思わせる音の響きだったのである。しかも、最後が「り」で、鋭利と同じく鋭い。わたしは爪が弱くてすぐに先が割れて衣類などに引っ掛かるのが嫌で、かなり短く爪を切るのだが、たまに深爪となって痛い思いをする。その記憶と混ざり合って、深津絵里を痛々しく感じていたのだろう。

もともとわたしはことばの意味よりも音に反応する方で、意味を離れて音から音の連想/空想で、たいていは人の言ったことばの尻というより音を捉えて、その音が喚起する歌を自動的に歌いだしたりする。それが家人にひどく嫌がられる癖なのである。たとえば、「〇〇さんの上の子が中学受かったって」と聞いて、「上野発の夜行列車降りたときから~」となるし、「あかぎれが出来た」と聞けば「あかぎれ山も今宵かぎり。可愛い子分のおめえたちとも、離れ離れになる門出だ」と、これは歌ではないが、ついはじまってしまうのである。