コンビ名

芸人の祭典のやうなものに参加してゐる。テレビでよく見る吉本系の芸人が、道路のアスフアルトの上ででんぐり返しを続けたりと体を張つた芸を繰り広げ、中でも藤原の原西は鉄塔の上で頭を受け皿にのせる形でさかさまに胡坐を組んで置物の真似をするといふ芸当をやつてのける。やがて今回の興行主の長老が待つ居酒屋に挨拶に行くことになる。森三中が先に行けといふので、わたしと相方は九十過ぎのさばけたお婆さんとその息子らしい初老の男の前に進む。「ああ、よく来たな」と老婆は闊達に話しかけてくれる。わたしは「東京から来た、ゴチツクです」と挨拶をする。どうやらそれがコンビ名らしい。相方は女性で、どう見てもミラクルひかるなのだが、吉本多香美だと言ひ張る。挨拶を終へて末席に下がつたわたしは、「吉本さん、どうして僕たちコンビを組むことになつたんでしたつけ」などと間の抜けた質問をする。向かふでは別のコンビ「ジヨン・レノン子」が挨拶序にネタをやつてゐて、季節はずれのスタツドレスタイヤの音の物まねをしてゐる…。