村山、置賜巡り

九月二十三日(金)晴
明くれば昨夜までの荒天が嘘のやうな爽やかな秋晴也。九時O氏ホテルに到着しO氏の車にて山形見物に出づ。まずは長井市内の大正期に建てられた洋館風の医院建築を二箇所見た後北上。途中鮎の簗場おしんのロケに使はれた吊橋、棚田などを見ながら寒河江慈恩寺に至る。八世紀の創建と伝ふる古刹也。かねてより余の参詣したく思ひゐたる寺なれば僥倖といふべし。古色蒼然たる堂宇、三重塔、仏像等を面白く見る。辞して寒河江市内の中華ソバ屋福屋に移り、名物ワンタン麺を食す。此の店嘗ては何処にでもある大して美味くもない普通の店なるも、二代目が修行の後に工夫を重ねスープ、ワンタン、麺すべてを刷新してより評判を呼び、今では県内でも有数の人気店となるといふ。食後一旦宿に戻り、レンタカーを赤湯駅前の営業所に戻し、併せて帰りの新幹線の指定券を取つた上で再びO氏の車にて米沢に向ふ。O氏の母校たる山形大学工学部の洋館の学舎を見学の後、すぐ近くの林泉寺に往く。上杉家の墓所直江兼続の墓のある曹洞宗名刹にて、O氏学生の頃参禅せし寺といふ。往時は荒れて拝観料などとらぬ寺であつたらしいが、大河ドラマの影響もあつて今ではすつかり観光寺になつてゐる。参詣の後電車の時間も迫りたればO氏に米沢駅まで送らる。休日を割いてのO氏の懇切なる案内に対して厚く礼を陳ぶ。四時半過ぎ発のつばさ号にて帰京。電車を乗継ぎ二子新地のN子の部屋に至る。程なくしてヤマト運輸の引越部門営業来たり見積をなす。余の戻る前に既に二社見積が済んでをり、予想通りヤマトは最高値にて結局サカイを使ふことに決す。遅い夕食を倶にとり、十時に去りて帰宅、直ちに就寝。





長井市内の洋館、棚田、慈恩寺山形大学工学部旧校舎