尺八三昧

十一月二十六日(土)晴
十一時より一如庵にて尺八稽古。布袋軒三谷、流し鈴慕を浚つた後初めて無住心曲に入る。稽古後の雑談中に先生より二尺一寸や二尺五寸の名管を見せて戴く。俄かに新しい竹が欲しくなる。徒歩高田馬場に到り新宿経由小田急参宮橋にて電車を降りる。再び徒歩にて国立オリンピツク記念青少年総合センター内桜花亭に赴く。近づくとすでに筝三絃尺八の音色を聞く。余り金をかけてゐない「日本風」庭園に臨む和風平屋の建物にて十畳二間を擁する。入口にて参加費を支払ひ、竹友会同窓会合同合奏練習会に参会である。
中に入ると丁度絃方のA先生の指導のもと磯千鳥の終りの部分の細かな音合せをしてゐるところであつた。曲の細部を竹方の部分まで知り尽くした先生の指導は痒い処に手が届くやうなきめ細かさで、かういふ指導のもと合奏をしてみたら楽しいだらうと思はせる。其の後筝曲が続き、休憩の後六段の合奏に余も加はり二度吹く。さらに黒髪を三絃と、夕顔、千鳥を大勢の合奏で吹奏。手が追ひ付かなかつたり間違つて覚えてゐたところもあつたが、最後の方は少しは音も出て、久しぶりの三曲合奏を楽しむことができた。
六時前練習会を終了し、会場の掃除片付けの後センター内のレストラン「さくら」に移動し懇親会。諸先輩方と尺八や邦楽についての談義を交はす。特にA先生の音楽に対する熱い思ひに接し、余も襟元を正して尺八に真剣に取り組まうといふ気持ちになる。それにしても九十年以上続く大学サークルの、何と懐の深く仲間に優しいことかと此の手の会に出る度に強く思ふ。倶に楽曲の演奏を楽しむだけでなく、初めて会ふ先輩や後輩ともすぐに打ち解けられるのは不思議な程である。九時半前辞して帰宅十一時を過ぐ。