墨をこぼす 

十二月十四日(金)
定時に退社し家に帰り、尺八の練習をしようと文机上の墨池をどかそうとして手が滑って落とし、中の墨液が畳や床にこぼれた。その後始末に小半刻を費し、練習時間が減ってしまった。我が家では毎朝半紙二枚の習字をするのがここ半年程の習慣になっていて、わたしは張廉卿の楷書千字文、家人は今は智永の草書千字文をやっている。朝の三十分ばかりの時間、先に家人が書いてわたしが後に続く。時間がないので墨を磨ることはせず墨液ですませているため、家人はプラスチック製の、わたしは陶器の墨池を使っている。普段は当然文机の上にのっているが、尺八の練習の際には譜面を机の上に拡げるので邪魔になり、畳の上に仮置きするのだが、そうしようとして重い方の陶製の墨池をひっくり返してしまった訳である。いつかやるのではないかと思っていたら、とうとうやった。フローリングの床は割に簡単に墨汚れを取ることができたが、畳はスチームモップを出すなどして大変であった。だいぶきれいにはなったが、畳の目につまった墨がとりきれず、多少黒ずんでしまった。