レアメタル

四月二十九日(金)陰
此のところ毎日家に戻るとユーチユーブでベィビーメタルをずつと見てゐる。余の惡い癖だが氣に入るととことん厭きるまで夢中になるのである。最初の衝撃が過ぎて、次第に曲ごとの雰囲氣や振付の違ひ、そして何より三人の女の子たちのより子ども時代の過去の容姿の変遷や個性の違ひに興味が行き始める。基本的には娘の幼稚園の學藝會に出掛けたところ想像以上のパフオーマンスに頬が緩みつぱなしのお父さんといふ感じではあるのだが、まあ可愛くてしやうがないといつた氣分である。三人の中で余の好みはユイメタルで、あの幼な顔と格好いいダンスとのギヤツプに、昔ブイブイ言はせてゐたおぢさん程嵌まるのではないかと思ふ。いはゆる「おすまし顔」が可愛いし、加賀まり子の若い頃を思はせるベビードール顔と元氣な踊りのミスマツチが、おぢさんの頬を激しく緩ませるのである。成長過程にあつて今後も刻々變化してゆくのであらうが、ますます小惡魔的な魅力を増すのではないかと期待してゐる。それに比べると、失禮ながら他の二人は女の子としての可愛さのピークが過ぎた感がある。モアメタルは小學六年生から中一くらゐが最も愛らしく、其の頃を知つてゐれば今もその名殘りを探し出すことも出來やうが、今初めて見るとちよつとエッと思ふ。但し、ダンス時の表情などおやぢ殺しの魅力は健在で、可愛いことは確かであり、あくまで余の好みから外れるといふに過ぎない。この先もう少し成長すると、女性らしい美しさに達する可能性もあるかも知れない。スーメタルも中一から二年當りが可愛さのピークだつたが、こちらは恰好良い女の子の方向に成長して來たので、歌の旨さや聲質の良さと相俟つて、抜群の存在感を示してゐることは論を待たない。彼女の歌唱力を生かすならソロで今と違ふジヤンルの歌の方が良いのだらうが、それではよくある歌手のひとりに過ぎないのかも知れない。スーメタルの歌と脇の二人の可愛く激しいダンスが魅力を相乗的に盛り上げてゐるのは明らかだからである。ダンスをやつてゐた女の子に聞いたら彼女たちの踊りはそれ程切れっ切れではないさうだが、元氣一杯だしとにかく可愛い。五十肩以來肩を廻したり手を高く挙げることすら難しくなつた余のやうな中年男性には彼女たちの元氣一杯な踊りは若さの輝きに満ちてゐて眩しくも羨ましい。今どきの若い子らしく手足は細く伸びやかで、その激しい踊りは華奢ないたいけなさを強調する。あれが二の腕に脂肪がついて逞しい腕になつてゐたら全く興ざめであらう。どこぞの國の整形によつて作られた似た顔の美女ばかりのユニツトと比べても、絶世の美女でない分だけナチユラルなかわゆさがあり、日本の「カワイイ」もここまで恰好良くクールになつたかと思ふと感慨深い程なのである。會社の若い女の子や自分の娘に「ズッキューン」とか「ダメダメダメダメ」などと真似をさせて喜んでいるおぢさんたちは數知れぬであらう。余もさういふ娘がゐたらと憧れるばかりである。
今日も結局、マエケンイチローのメジヤーリーグ中繼を除くと終日ユーチユーブでベィビーメタルのライブ映像や情報を傳へるものを見て過ごす。殆ど痴れ者である。しかし、余もさうなのだが若い頃ヘビメタやハードロツクに親しんだオッサン連中に意外な程ベビメタ心酔者が多いやうである。實際耳慣れた音に感じて耳馴染が良い上にあのキユートなパフオーマンスであるから、めろめろになるのも宣なるかなである。今のところ振付で一番氣に入つてゐるのはヘドバンギヤーである。特に左右の二人が腕と脚をX型に一杯に拡げて跳び上がるところが好きである。若い女の子が走ったり跳んだり撥ねたりするだけで、何故こんなに可愛く思へ嬉しくなるのか自分でも不思議である。スーメタルの伸びやかな聲質を余はかなり好きである。余は自分で言ふのも何であるが、女性の聲質に對する好みはかなりうるさい。顔が綺麗でも聲が惡いと全く受けつけない。それがスーメタルの高音はとても好きなのだ。ところで海外のライブ映像でヘドバンの後半でボーカルがユイメタルに替はつたのを見つけたのはラツキーだつた。勿論スーメタル程の声量と伸びやかさはないのだが、キユートな聲質で可愛い事この上ない。振付ではKARATEも惡くない。華奢で可憐な少女たちが空手の型めいたものをやる倒錯した魅力があるし、可愛い振付も随所に見られて樂しめる。