残余

十月二十九日(日)雨
ビルの屋上の金網のフェンスを越えて通常入ってはいけないエリアで体操をした。それから再びフェンスを越え、階段を走って降りるとき途中で足を払われた。つまずきそうになって振り返ると大柄な女子高生が立っている。手にスマートフォンタブレットの中間の大きさのデバイスを持っている。日本人かと思ったが、どうやら違うらしく画面のアニメについて何か聞きたいことがあるらしい。私とて見当もつかないが、画面を覗き込むうち彼女と額が触れた。電気が走る感じがして、私は彼女を引き寄せ唇を重ねた。何の抵抗もなかった。私はセーラー服の中に手を入れ肩から背中へと愛撫して行き、乳房に触れた。小さく硬めな乳房であった。私ははっとして手を引いた。それでも名残惜しい気がして太ももを撫でた。白く柔らかい肌は魅力的だったが、私はそろそろ行く時間だと感じていた。
渋谷で人に会う約束があるので東横線の電車に乗った。時間があるので各駅停車に乗ると、車内に十五人くらいが座れる長い座席があって、誰も座っていないので真ん中に座る。すぐにうとうとと居眠りを始め、気がつくと小さな部屋になっている。隅に小さな出口があるのでそこから出るとアーチを描いたとてつもなく高い天井の車内に戻ったが、座席はなくただのだだっぴろい空間である。中ほどに階段が見えたので下に降りるとそこはプラットフォームで人が立って並んでいる。私は再び車内に戻る階段を探すが、最初は改札に出る階段を昇ってしまい、二度目は元の空間なので下に降りると今度は普通の車内になっている。そして、急行の通過待ちなのかずっと停車したままである。駅名を見ると聞いたこともない駅である。普段特急や急行しか乗っていないので知らなかったが、各駅停車だと相当な時間が掛かるものらしい。私はアーチの天井に描かれた空色の絵を思いだし、約束の時間に遅れることを覚悟し始めていた。
彼誰の橋本さんが福生の先の山奥に広大な土地を買って隠者のように住み始めたという。膨大な蔵書もついにそこに集められることになったという。それを聞いていっそのこと彼誰同人の蔵書を全部集めて図書館にして、同人が敷地内に家を建てさせて貰えば丁度いいのではないかと思う。六人の蔵書を合わせれば、重複も多いにせよ、十万冊くらいになるのではないか。本の置き場所に困っている身として是非実現させたいと思うが、果たして橋本さんは了承してくれるだろうか。