墓参

 昨日土曜に諏訪湖畔の霊園に墓参りに行って来た。会社の先輩調香師で、三年前に亡くなったМ氏の墓である。入社して二年目に研究所配属になって以来、色々と世話になった方である。ただ、多少狷介なところがあり、香り創りに関する意見も異なっていたため、最後の方は疎遠になっていた。それもあって、訃報に接しながら葬儀に参列することをしなかった。それでそんな不義理をしたことが心の隅に引っ掛かっていたのか、夢にМ氏が出て来て生前の姿そのままにしていて、あれ、死んでいるはずなのにと思うことが何度かあった。その後たまたま、後輩と話をする中で、彼が諏訪にあるМ氏の墓を訪ねたことがあるというので、その後輩と他にМ氏とゆかりの深い二人を誘って私の運転で出掛けたものである。なるたけ早くに行きたかったが、暖かくなってからの方がいいと後輩が言うので五月を待ち、やっと実現したのである。

 中央高速が途中混んでいたこともあり、三時間半掛かった。昼過ぎに着いて、諏訪湖を見下ろす斜面を登ってМ家の墓を見つけ、持参の伽羅の線香を焚き、読経合掌の後、尺八の献奏をした。お詫びと追憶、そして冥福を祈った。それから墓石を清掃して、やっと肩の荷をおろした気分になった。その後近くの諏訪大社下社秋宮を参拝、そばの昼食を取り、一度諏訪湖畔に出ただけで帰途に就く。それでも帰宅は五時半過ぎである。懸案がひとつ片付き、ほっとするとともに、往復の車中の会話含め、むかしのことを色々思い出した一日であった。