十月十四日 陰

昨夜今北洪川著『禅海一瀾』読了。江戸期に書かれたる、儒家の言辞を禅の精神にて説く書にして用字用語晦渋を極め、僅か百頁にも満たざる小著なるも読解に十日以上を費やす。岩波文庫版の読下し文にて此の態なれば漢文白文にては到底歯が立たざらむ事は明らかなり。漢籍佛典の読破すべき書は数知れずと雖も原典に当たる限りは日暮れて道遠しの感否めず。浅学菲才を恨み嘆く事頻りなるも如何はせむ。

此処数日気温下がらず残暑の如き溽有り。

定時に退社す。月齢六日の月雲間より清かに見ゆ。帰宅後尺八を吹く事日課の如し。蕪の味噌汁を煮て夕餉と為す。宿痾の胃痛再発し苦しむ事終日、憂愁に堪へず。

本日、智利の落盤事故にて取り残されたる三十三人無事救出との報に接す。以て賀す可し。

本日亜馬孫より下記の書籍届く。

  • 季刊日本思想史 No.75 (日本思想史懇話会)