ドライヴ

十二月二十三日(月)陰
家人と車にて結城に往く。出発して二時間強の後、昼過ぎに着いてまず小倉商店の郷土館を訪ぬる。地機織機や紬に關する資料の展示があり、それを見て廻る。若旦那は急用にて不在なれど、話は通じてゐたらしく社員らしき人が詳しく説明してくれる。さらに二階の展示室に至れば当主の小倉氏が古き結城紬の長着など取り出して家人に羽織らせるなどして親しく話を聞く。結城紬への愛情一方ならぬ様にて、話好きらしく展示の反物を家人に當てるなどして頻りに結城紬の良さを語らる。余は同じ階にて實演中のいざり織りを見學す。織り手の女性に質問などして、織物の根本原理を漸くにして理解し始める。其の精緻にして根気を要すること言語に絶す。
階下に降りお茶まで頂戴しつつ、社長夫人も交へ歓談の後、過去の反物の圖案帳まで見せて貰ふ。各々の反物の端四・五センチ幅を貼り付けたスクラツプブツク状のものにて、文様意匠の數々まず以て見事といふより他なき織物の見本也。風合ひや着心地に加へ、斯くも精妙なる絣の文様を見て、余もすつかり結城紬の魅力を知りたる心地す。結局三時過ぎまで、話を聞き見本を見て過ごす。過分の厚遇に感謝の言葉を知らず。
其の後さして広からぬ結城の町中に車を走らせ、結城城跡始め史跡を見た後五時過ぎ、赤ざわなる蕎麦屋にてちたけの蕎麦を食したる後歸途に就く。連休の事とて澁滞を覚悟するも、案に反して東北道始め高速道路は好く流れて八時半には家に着く。きものの奥深さの一端に触れ得た連休であつた。