夏目坂から嵯峨棗

三月二十五日(土)陰
十一時より一如庵にて尺八稽古。其の際先生より六本木の倫敦ギャラリーにて嵯峨棗の展示があるから店主に紹介がてら一緒に行かないかとの話があつた。本來此の日は家人と近代美術館の樂家の茶碗を見に行くつもりなるも、勿論快諾して、待ち合わせてゐた家人に連絡してまず目白で晝食を取ることになった。驛に近いビルにある、神先生馴染みの西洋料理の店にて余はヒレカツを食す。美味也。其れから山手線で恵比寿に出で地下鐵にて六本木で降り、徒歩ピラミッドビルの倫敦ギャラリーに到る。入口横には大雅堂の書幅あり。中は嵯峨蒔絵の棗や香合、根来塗の香合などの優品多く、並の美術館より余程樂しめた。先生より店主とその子息の紹介を受く。美しい圖録を頂戴したのは幸ひであつた。六本木交差點にて先生と袂を分かち、喫茶の後ミツドタウンを覗く。其の間如覚と連絡取れ、稽古後神先生と呑むことになり、家人と別れ一人で再び道場に赴く。其の際ボールペンの話になり、如覚と先生の愛用品はファーバーカステル製のものであることを知る。到底余の望むべくもない高級品である。やがて行く店の意見纏まり、東西線銀座線経由で上野廣小路に出で、徒歩湯島天神に近い縄暖簾シンスケに入る。幸ひすぐに席が空き、八時半過ぎ迄歓談。余は酒一合に自重す。料理は極めて美味也。九時過ぎ上野より歸途に就く。樂しい一日であつた。