着物と香木 

十一月十一日(日)陰後雨
夕方より雨の予報なれど着物にて家人と家を出で京濱東北線にて浜松町に到る。徒歩都立産業貿易センターに赴き四階にて開催中のきもの呉盟会の奉仕市に足を運ぶ。受付にて案内状を出すと、其れを送り寄したる人形町錦やのK氏が呼ばれて現れ、余等を案内してくれる。主に男物の反物を見る。一度にこれだけ多くの男物を見る機会は稀にて大いに参考となる。紬は好みのもの多し。中に格子縞の紬があり、中々見かけぬ柄にて品も良くしかも正札の半額以下の値札が付いてゐる。先日京都で心の動きし梨地のお召よりも安価也。K氏もその物は他店のものなれど余に似合ひ粋でお買ひ得だと勧める。K氏着物反物の知識を惜し氣もなく教へてくれ、さらに話の中で氏も古心流の香道の稽古を為すと聞き、日本の文化生活様式一般の素晴らしさを説くことからも余は信頼を寄せるに足ると判断す。単衣に丁度良ささうでもあり竟に購ふ事とす。反物として購入、仕立ては越後屋さんに頼むこととする。是に合はせて紗の羽織など羽織れば更に粋ならんなどと益々和装の樂しさに嵌りつつあり。滿足して会場を後にし、驛近くで晝食をとつてから山の手線にて原宿に移動、徒歩妙喜庵に至り二時より香道稽古及び香席。稽古ではお初香で余がやる筆者の所作及び記録の手順の確認をなす。香席では時雨香を為す。主客に座せし余は二炷のうち一つを當てるも二つとも正解せし叶の人二人あれば会記は貰へず。五時前辞して七時前歸宅。旅行中の買物やパンフレツト類の整理を為す。