大日本

二月二十四日(金)陰
市ヶ谷駅より徒歩市ヶ谷本村町に到る。加賀門から防衛研究所に入る。すぐ横の受付の建物に入る。さほど物々しくなく、受付の女性も若くて可愛くて和やかである。入館申請書に記入し免許証で本人確認を行い、受付票と入館カードを渡され、ゲートを通って建物に入り、「戦史史料閲覧室」への案内板に沿って二階に上がり廊下を進む。一般人が入るエリアは外を見渡せないようにか窓は高いところにしかなく、明かり取りの用途なので何やら監獄にでも入ったような感じがする。閲覧室の手前にロッカーがあり、コートや鞄を入れていよいよ中に入る。まず住所氏名を書かされ、それから借り出したい史料はあらかじめ調べてあるので閲覧申込み書に記入して出すと番号札を渡される。暫くして番号で呼ばれ、三冊の史料を手渡される。二三人調べものをしているが、空いている広いテーブルに座って閲覧を始める。期待していた程詳しくは書かれていなかったが、興味深い情報は多く、一部写真に収めることにしてその申込み書も書く。コピーではなく自分で写真を撮るのである。史料を一度預けると別室に呼ばれてそこで撮影する。監視される訳ではないが、撮影用の個室で私の場合アイパッドで写真を撮るのである。海軍の毒ガス開発に関する史料を借り出したのだが、公開している以上問題ないものとみなしているのだろう。終わると史料はそのまま残して退出し、終わった旨を告げると、史料を検めるのか暫くしてまた返してくれる。引き続き閲覧してメモなどを取り、読み終わって受付に史料と番号札を返すと申込み書と照合して間違いないか確認の後、受付で渡された受付票に室長がサインをして渡してくれる。ロッカーでコートと鞄を取って来た経路を戻って受付にカードと受付票を渡して退出する。それなりに手続きはあるが、この手の図書館としてそれ程煩雑な訳ではない。外に出ると目の前にDNPの巨大なビルが聳え立つのが見える。ビルは高く、防衛省を見下す格好になり、それでいいのかと思ったが、すぐにそれでいいのだと納得した。大日本帝国陸海軍ならともかく、防衛省より、大日本印刷の方が偉いに決まっているではないか。市ヶ谷のDNP飯田橋の凸版、ともに立派なビルである。印刷会社というのは儲かるものであるらしい。防衛研究所も人が少なかったが、DNPのビルも殆ど人影が見えない。寒々とした威容はむしろこちらの方が役所かと思えるものであった。私はこの印刷大手二社が大嫌いなのである。大日本を恥ずかしげもなく使っているところが嫌だし、凸版は自分の会社を担当する営業が嫌いなので会社も嫌いになった。