一念発起

 最近、曲作りをはじめた。作曲である。もちろん、尺八の曲である。

 松岡正剛先生に俳号を貰った際、是非尺八の曲を作るように言われていたことを思い出したからではないが、とにかく曲を作りはじめた。闘いの場で死んでいった武士の鎮魂をテーマにしたもので、来年の春に河内で、秋に鎌倉で吹く予定である。

 太平記の影響もある。今年の6月からずっと読んで来た。鎌倉であるから、滅んだ北条一族への鎮魂をまず考えたが、太平記を読んで思うのは、北条も新田も楠も、要するに後醍醐天皇がトチ狂って天皇親政などを目指さなかったら、滅びずにすんだのではないかということだ。だから、後醍醐の野望に翻弄されて死んでいったもののふに捧げるつもりで、この曲の副題を「建武夢残」としようかと思っている。主タイトルはまだ決めていない。いずれにせよ、観心寺楠公祭では楠正成首塚前で献奏し、鎌倉では東勝寺で自刃した北条一族の霊に手向けたいと思っている。

 素人っぽいものになるのだろうが、思いを音に乗せて曲を作るのは、秋めいてきたこの季節には何やら寂び寂びとして、興趣が尽きない。心に染みわたる音の連なりが作れたらと思っている。