旗本・香水・鏡

 今わたしが最も興味を持っているのがこの三つのことがらである。より詳しく言えば、幕末から明治初期にかけて朝廷に帰順した旗本たちの動向とその背景の探求、産業史としての香水および香料業界、そして鏡とビジュアルアート(特に西洋美術)との関係、といったところだろうか。実に脈絡も関連性もない「三題ばなし」である。ふと思い出したのだが、分裂症ぎみ、というより全く違うジャンルが同時にわたしの興味・関心に入るということは昔からよくあった。何せ、小学生のころ初めて買った(買って貰った)レコード2枚がベートーベンの「運命」と欧陽菲菲(オーヤン・フィーフィー)の「雨の御堂筋」だったのだから。さらに、小学校の卒業文集では自分の趣味として「野球・鉄道・西部劇」を挙げていた。すなわち、野球小僧と鉄道オタクとガンマンがひとりの中に共存していたのである。支離滅裂であり、統一性や持続性といったものをまったく感じさせない、滅茶苦茶なチョイスである。何かひとつに傾注すると、やがて(と言うより、すぐに)厭きてしまうので、適度に精力を分散しつつ、それぞれへの興味持続期間を長引かせようとしているようにも取れる。あるいは、自分の中にそれらに通底する一本の筋が通っているのだが、実際には自分でもそれが何か分からないでいるということかも知れない。多趣味とかそういう問題ではない気がしている。それとも、やはり病気であることを疑ってみるべきだろうか。