書棚の整理

十一月十六日(火)晴
此処数日飄眇亭の書棚の整理を進めてゐる。殆ど読む事のなくなつた小説の類の文庫本を抜き取り、二階に移す為である。日本文学の文庫本が一番多く、次がフランス文学、次いでドイツ文学の順である。その後はロシア文学英米文学が同じくらゐで、後はイタリア、スペイン、北欧、東欧、ラテンアメリカでまとめてもたいした数にはならない。実際さうした国々の文学作品は文庫になつてゐるものの数が少ないので致し方ない。ギリシア・ローマを始めとした古典作品は残すことにしたので、幅百二十センチに渡つて岩波文庫赤版が並ぶことになつた。尤も『カザノバ回想録』とマルドリユス版『千一夜物語』がかなりの分量を占める。後はホメロス、『ニーベルンゲンの歌』やラブレーなどで、今となつてはまず開くことはないのだが、やはり書斎に置いておきたいのである。
最近はハードカバーで出た本が数年後に文庫化されるといふ傾向が強まつてゐるので、書棚のことを思ふとハードカバーの古本の方が安くても文庫に入つてゐるものはついそちらに手が伸びる。一方絶対文庫にはならない学術書や体系本の購入も最近増えてきたから、いずれ大整理が必要になるのは目に見えてゐるのだが、なかなか踏み切れない。今まで、生活や仕事の大きな節目に三度に渡つて大量に本を処分(古本屋に売却)したが、結局其の都度後で後悔してゐるからである。其の時要らないと思つた本が後から見たくなることは必ずある。と同時にその存在を忘れ、読まないどころか一度も開いたことすらなく、何で買つたのか自分でも見当のつかない本も確かにあるから、どこかで思ひ切るしかないのは分かつてゐるのだが…。