変な夢

十一月九日(水)晴後陰
小洒落た建物の続く街角である。平日の午後で人通りは少ないのだが、建物の前にはそれぞれひとりづつ女の子が立つてゐる。見るとそれはエーケービーとかいふグループの女の子たちで、それぞれが一軒の店をやらされてゐるらしい。メイド喫茶だつたり、カラオケボツクスやカフエ、美容院などもある。わたしは中の「10番」と呼ばれる女の子と懇意で、其の店先で話をしてゐる。何でも何かで一位を取つたことのある女の子は赤いドレスを着られるのだといふ。「10番」は着てゐないが、隣には確かに赤いドレスの娘が立つてゐる。ただ、見るからに垢抜けしてゐない様子で「10番」からもその変な八角の髪留めはやめなさいと言はれ素直に頷いたりする。わたしはアイドルとは言へからだを許さない「10番」に対して、このままだと別れるしかないといふやうなことを言ふ。その内所謂アキバ系の男たちがたくさんやつて来て、「10番」の店の席も一杯になつてしまふ。不思議なのはさうした男たちが目当ての筈の立つてゐるアイドルたちに少しも話しかけやうとしない点だ。わたしは「10番」の荷物をどこかに届けなくてはならないのだが、他に親戚のおじさんとその荷物も運ばねばならず、車に入りきれずに二度に分けることにして出発するが、祭りか何かでいつもの道が通れず迂回するうち車が自転車になり、道は階段になつてしまひ、わたしは諦めて「10番」のところに戻るが、接客のためか「10番」が見当たらない。淋しいやうな、つまらないやうな思ひでわたしは書斎に入つて片付けを始める。トイレに行きたくなつて初めて自分が丸裸であることに気づくが、夏は裸でゐられるから楽だななどと呑気なことを考へる。ただ、車を伯母に言はれた場所に止めたままにしてあるが、やはり久が原八幡の中に入れさせてもらつた方がよくはないかといふことだけ気に掛けてゐる。
何度も書いてゐるが、余はエーケービーになど丸で興味はないのである。それなのにこんな夢を見る。「10番」は確かに余の好みを備へた娘であつたやうな気もするが、実在のメムバーではないであらう。肉体関係を迫る余の姿は若くチヤラチヤラしたものであつたが、裸の夢もトイレの夢もよく見るものだから余計に、あの女の子が立ち並ぶ街角の光景が奇異に感ぜられてならないのである。