英吉利人社長の不可思議

十二月七日(水)晴
オリンパスの巨額損失隠しに関する第三者委員会の報告書が昨日発表された。ずつとこの件を追ひかけてゐる余にとつては熟読に値する報告書であつた。いろいろな意見や批判があるのは当然だが、ここまで明らかになつて見ると、其処まで隠してをきながら、何で唐突にイギリス人を社長に迎へたのかが、余にとりては最大の謎に思へて来た。社長に据へてをいて、尚隠し通せると考へたのであらうか。案の定買収を巡る財務の不健全さを指摘されて慌てて解任といふ動きになつて、それが世間の耳目を集めてかうした結果になつたのは明らかであり、結果論とは言へ今まで成功してきた隠蔽に比して実にお粗末なドタバタではなかつたか。勿論、隠し通すことを推奨する訳でも、隠蔽の成功を称賛する訳でもないけれども、必死で隠して来たにしては、外国人社長の登用といふのはとても不用意で、逆に何か特別な理由があつたのではないかと勘ぐりもたくもなる。今は正義の味方のやうに振舞つてゐるマイケル・ウツドフオードといふ人も、その意味で胡散臭さもあるのではないかといふのが今のところの余の感触である。

先日の彼誰忘年会でも話題になつたことのひとつに、製薬業界が来年四月から医師への接待を自主規制する件がある。ネツト上のインタビユーでアストロゼネカといふ外資系製薬会社の日本法人社長であるイギリス人ポール・ハドソンといふ人が、この自主規制について、接待はおろか医師にボールペンを配ることも止めたと自慢してゐる。日本の商習慣や現場の状況を無視した、外資系企業にのみ都合のいい実に馬鹿げた自主規制だと思ふが、マーケテイングの修士を修めて製薬会社を渡り歩いた此の人にとつては、医療も医薬も金の為でしかないのであらう。アングロサクソンの正論ほど手に負へないものはない。イギリス人の社長だけは招聘しないに越したことはないと、日本の経営者は知るべきである。余は出来ることなら日本は再び鎖国した方がいいと思ふ。