七月二十五日(水)晴 溽暑堪へ難し
午後半休を取り藤沢の古本屋を巡る。光書房他で良書を得る。釣果は下記の如し。
- 『太陽にかける橋』グエン・テラサキ/中公文庫
- 『私の東京物語』朝吹登水子/文化出版局
- 『東條英機と天皇の時代』保阪正康/文春文庫
- 『東京裁判日本の弁明』小堀桂一郎/学術文庫
- 『人口から読む日本の歴史』鬼頭宏/学術文庫
- 『細川幽斎』細川護貞/中公文庫
- 『日本近代美術史論』高階秀爾/講談社文庫
一旦家に戻り、本を置いて暫し涼んだ後再び外出し、電車を乗り継ぎ半蔵門に至る。六時半より安田登氏による講演を聞く。『身体感覚で芭蕉を讀む』を元にした話にて、既に讀んで知つたる事なれど面白く聞く。「奥の細道」が能の素養なくしては讀み解き得ぬことの説明に、本文を謡ひ「むつましきかぎりは宵よりつどひて舟に乗りて送る」の後、唐突に「千じゆと云ところにて舟をあがれば」となるその合間に立廻りの舞ひを入れれば、前後が見事に能の如き体裁に整ふを示す段は、正に目から鱗の落ちる心地す。また芭蕉の旅の目的のひとつに義経鎮魂があることの説明や、昔ながらの歩き方の利点など聞くべき話多し。ただし、進行にやや難があつて十分に安田師の話を聞く時間が取れなかつたのは残念であつた。会場にて思ひがけず本條秀太郎さんの姿を見い出し挨拶をなす。十月に端唄のコンサートを開くとのことなれば是非とも駆けつける積り也。それにしても安田登さんと本條秀太郎さんが並んだ姿は、日本男子のもつ剛毅でありながらしなやかさを併せ持つ体の厚みを感じさせて頼もしい限りであつた。