宗達の牛

三月六日(金)陰晴不定
朝いつもより早めに家を出で新幹線にて京都に向かふ。驛からタクシーで京都ホテルに入り、荷物を預けた後徒歩鴨川を渡り頂妙寺に到る。冬の京都の特別公開にて勿論余も初めて也。俵屋宗達ゆかりの寺とて、たらしこみの技法を効果的に使つた有名な牛圖を觀る。ガイドの説明適切にて見るべき處につき多くを知るを得る。寺宝を拝観の後墓地に赴き宗達始め俵屋家の墓を掃ふ。其の後二条通りの古書肆中井書房と水明洞に立ち寄る。中井を挟んで水明洞が両脇にある不思議な構圖也。京都新聞社刊『京都の日本畫』を拾ふ。再び頂妙寺境内を抜け仁王通りで饂飩を食したる後ホテルに戻り、既にチエツクイン可能な時間なれば部屋に入り、スーツから平服に着替へて外出。御池通りを堀川まで歩き二条城に入る。梅園を觀る爲なるもいまだ三分咲き程なるは殘念也。二の丸御殿には入らず庭を觀て歩く。良い石だと思つて近づき寫眞を撮つてから、前囘來た時も同じ石を同じ角度から撮つてゐた事に気付いて苦笑す。其れから堀川通りを三条まで下り東に進んで京都文化博物館に至り、Parasophiaの内覧會を観やうとするも招待券を持たざれば果たせず。近くの喫茶店にて小憩の後尾張屋に行き早めの夕食と爲す。ホテルに戻りテレビを見る。佳奈晃子の現在の姿を知り衝撃を受ける。美しかつた人を襲つた不幸に言葉を失ふ。そして改めて自分の年老いた事に愕然とする。
宗達の墓
二条城の庭