私淑

十一月二十四日(火)陰
楠見朋彦「塚本邦雄の青春」讀了。若き日の邦雄の足跡を追つたもので面白く讀む。「菊帝ー小説後鳥羽院」も讀み了へた。もつと多くの人に讀まれ、もつと小説家としても評価されるべきだと思ふ。短歌の人たちだけの讀み物では勿軆ない。今邦雄の「新古今新考」を讀んでゐるが、これを余が學生時代に讀んでゐたら國文科に進んでゐたかも知れない。和歌のかういふ讀み方をしたかつたのに、當時余は自分の感覚からずれた古臭い解釈の書物や授業にしか出會へずに過ごしてしまつたのだ。これからもつと、邦雄の短歌や文章に觸れて、美しい日本語を學びたいと思ふ。と同時に歌の方はとてもあの域に達することはないだらうと半ば諦めの氣持も強い。下手な腰折れを自作するより、讀む快樂にとどまつてゐる方が幸せかも知れない。