記憶の町並み

土曜に街歩きをした。ブラタモリならぬ「ブラた××」の第五回で、今回は女の子三人、野郎二名の五人で三田から麻布界隈を歩いた。慶應女子もいたので義塾三田キャンから綱坂を昇り、三井倶楽部前で記念写真の後神明坂を下って中之橋で古川を渡り、狸穴に入って鼠坂から麻布台に上がる。鼠坂では一番若いRちゃんに全力坂をやって貰いそれを動画に収めるというセクハラまがいのお愉しみ。その後霊友会の脇の三年坂を下って、戦後の東京の面影を今の若者たちに見せてやろうと思っていたら、何と落合坂に通ずる小道の両側が地上げにあったのか見事に更地になって現在造成工事中である。台町の御屋敷町の合間にある、こうした谷地の庶民の町が、またしても巨大資本の餌食となって消えてしまったのである。悲しむべし。私は学生時代から江戸東京散歩が好きで、アークヒルズになる前のあの辺りの何とも言えぬ懐かしい雰囲気を愛していたものだが、バブル期に敢え無く消えてなくなり、それでも残っていたこの一角をことの他愛してよく歩いたものだが、しばらく来ぬうちに、利潤追求の資本主義の魔の手が伸びていたようで、無残にも町並みごとごっそりやられてしまったのである。金がなくても寄り添うように庶民の暮らしが成り立っていた港区は、もはや記憶の中にしか存在しないもののようである。その後鳥居坂経由で十番に下り、善福寺や一本松を江戸名所図会を見せながら見学した後暗闇坂から再び十番へ。今回の坂の中では暗闇坂が一番評判が良かった。それから広尾六本木間の尾根道を歩いて有栖川公園を歩いて広尾のカフェでビールを飲んで解散。昭和は遠くなりにけりの、平成の終りの週末であった。