ワールドカップ

 今回のラグビーワールドカップは、スタンドでの観戦こそ出来なかったが、いろいろな場所でテレビ観戦をした。予選プール中は日本にいて家のテレビで見ていたが、日本が南アに敗れた試合はリスボンスポーツカフェで、同じ日の前の試合で敗れたばかりのフランスの客たちと一緒に見た。カラテを習っているというそのフランス人たちは日本を応援していたが、日本は後半力尽きて破れた。ニュージーランドイングランド試合は、パリのアパルトマンの小さなテレビ画面で、オールブラックスが敗れるのを呆然と見守っていた。翌日の南アとウェールズの試合は接戦で面白い試合だったが、やはりパリの知人宅の居間で見た。そう言えば、4年前のフランス対ニュージーランド戦もパリで香道傍流若宗匠ご一行と一緒にパリのマレ地区のレストランで観戦し、終わった後今回お邪魔した友人と若宗匠、当時たまたまパリに研修で来ていた会社の若い女の子の4人でスポーツバーに繰り出して遅くまで飲んだのだった。

 そして、三位決定戦を、今日自宅でテレビ観戦しようと一時間休を取ったところ、地上波での放送がないことがわかり、急遽関内のスポーツバーを予約して一人で見に行った。結果は知っての通り、快勝となったが、圧勝とまでは行かなかった。イングランド戦の敗戦という悪夢を払拭するためにも圧倒的な力の差を見せたいところだったが、さすがにウェールズも意地を見せた。点差はついたが、白熱した良い試合だったと思う。

 それにしても、ラグビーを見ていて思うのは、近縁のスポーツであるサッカーとの違いの大きさだ。ラグビー選手の太い腕、厚い胸板、逞しい太腿、そして男らしい顔つきと比べると、サッカー選手はいかにもひ弱でちゃらく写る。ガツンとぶつかりあって、倒されてもすぐに起き上がってプレーを続行する姿や、若干のラフプレーなどどこ吹く風で試合が進行する様を見ていると、サッカーの、例のネイマールを代表とする、ちょっとした接触で転げ回る姿はほとんどお笑いでしかない。野球少年だった私のような人間は、もともとサッカー部の奴らがちゃらちゃらして女にもてる様子に反感を持っているので、公平な判断でないのは百も承知だが、それにしてもサッカーというのは情けないスポーツである。もちろん、サッカーのハイレベルな選手たちの高度なテクニックは賞賛に値するが、サッカーと比べると、審判の判定に対する態度にしても、選手交代を告げられた際のふるまいにしても、フォアザチームを優先するラグビー選手の潔い男らしさには、男から見ても拍手を送りたくなる。サッカー選手よりもっと嫌いなのはサッカーファンで、あの粘着質でオラオラ風の気質には全くついていけない。ラグビーの良さや素晴らしさを感じれば感じるほど、サッカーと正反対なために、サッカーの嫌味なところに気づいてしまう人は少なくないのではないかと思う。

 とは言え、今日の三位決定戦の地上波放送がなかったように、ラグビーファンというのは、サッカーファンに比べれば圧倒的に少ないのであろう。ルールがわかりづらいという声はよく聞く。大学時代に早明戦早慶戦などに行く機会があれば、先輩に聞くなどして自然にある程度のルールは分かるようになるのだが、自分でやっていない限り、確かに馴染の薄いスポーツではあるかも知れない。私は高校時代から、中学時代の友人がラグビーをやっていたこともあって、大学時代にも秩父宮ラグビー場に足を運ぶなどわりと親しいスポーツではあったが、それでも作戦面やフォーメーションなどに詳しい訳ではない。それでも、ワールドカップで目にするプレーは、目を見張るものがあって、今回は本当に楽しみにしていた。ワールドカップのレベルが野球で言えばメジャーリーグであるとすれば、大学の対抗戦など高校野球レベルであるとも言えるくらい、パワー、スピード、テクニックや戦術の面でその差は大きいと思う。反則やハンドリングミスで頻繁にプレーが止まる日本の試合とは別次元の展開は、見ていて本当に面白いものであった。それもこれも明日の一試合で終わりとなる。どちらのチームにもオールブラックスへのような思い入れはないが、とにかく面白い良い試合を見たいものである。