驚異

 友人から貰った年賀状に、昨年750冊本を読んだとあった。一日2冊以上だから、とてつもない量である。高等遊民として一日中本を読んでいられる境遇だから出来るとも言えるが、同じ境遇にあって自分がそれを出来るとは思えない。冊数重視だから分厚い本を避けたということで、それを笑う向きもあるかも知れないが、ここまで来ると量が質に転化するような気がする。加藤周一だったか、一日一冊読むよう心掛けていたというが、それはちょっと侮蔑したい気にもなるが、二冊となると次元が違う場に移る。

 一方で、もう一人の高校時代の畏友は、高山宏大人の本を全部読んでいるということを、また別の友人から聞いた。こちらは予想通りと言うか、あの人にしてこの書を読む、むべなるかなと納得できるものである。書く方も書く方なら読む方も読む方で、ともに尊敬措く能わざるといった感ひとしおである。

 翻ってわたしはと言えば、年末年始をずっと書斎に引きこもって過ごしているが、フランス語の本を辞書を引き引き読むので遅々として進まず、また幕末明治の古文書のくずし字を呻吟しながら読解するもこれまた捗らず、新年になって一冊の本も読み終えていない。まことに心許ない限りではあるが、わたしにはそれが楽しいのだからいいのである。年末のテレビ番組は一切見ず、年が明けてからもテレビなど見る気にはならず、ひたすら読んでカードを作っている。今年はこれを一年ずっと続けるつもりである。