馬鹿の典型

まずは次の文章を見てほしい。

「グループの体質を強化し、活性化させ、同じベクトルへ向けて力を結集させるための施策である。」

特別、問題のあるところはなさそうに見える。ビジネス関係の文書に普通に見られるような表現が使われているに過ぎないと誰もが思うことだろう。ところが、同僚の某女性がベクトルとは向きと大きさをともに含む量を示す概念だから、こういう使い方は相応しくないというのである。比喩的表現の根本に対する無理解と理系的な融通の利かなさの典型的な例であるが、通常の用例であり問題がないといくらわたしが言っても納得しないのである。ここまではまあ、一万歩譲って許すことにしよう。ところが、この文面の代案として出してきたものが「ベクトルを合わせて最大の力を一点に集中させるための施策」などという、物理の実験の話をしているような、かえって分かりにくくなるような修正だったのには呆れ返った。近視眼的と言おうか、ベクトルの正しい解釈に引きずられて、そこで何を伝えたいかが等閑視されるという、本末転倒そのものの対応しか出来ないのである。そうではなくて、ここでは単に「グループの体質を強化し、活性化させ、同じ方向へ力を結集させるための施策である。」にすればすむ話である。バカのこだわりにつきあっていると時間が無駄になることのわかる良い例である。