三姉妹

華道清源流の家元であるわたしが、新春の花立て行事に際して息子三人のやる気のなさに腹を立て、こんなことならやめてしまへと怒つてゐる。それを宥めやうとするのが、いつの間にか息子から娘に変はつてゐた三姉妹の長女が、極めて冷静に事の経緯を説明してわたしの誤解を解かうとしてゐる。わたしはこの子が一番母親に似て利発でかつ美人だなと思ひながら、三姉妹が自分の実の子ではないことに気づく。長女が小学校六年くらゐ、其の下の次女は四年生くらゐか。次女の方は明るくいたずら好きな性格で、響のもの真似で謝つたりしておどけて見せてゐる。顔も可愛らしく、わたしにもよくなついてゐてわたしはこの子が一番気に入つてゐるやうだ。三女は自由奔放で何を考へてゐるのか分からぬところがあり、今は大学生で姉妹の中では一番年齢が上のやうである。もう一人、わたしには息子がゐて、其れは自分自身でもあるやうなのだが、三姉妹の陰に隠れて目立たぬ存在である。次第にわたしはこの子どもたちを愛しく思ひ、この先もずつと守つて生きてゆけるといふ確信を得て、気持ちも新たに引越を決意する。次女があれこれ世話を焼いてくれ、わたしは着替へやうとするのだが、着るものが見つからなかつたり、ボタンがなかなか掛けられなかつたり、折角着替へても組合せが気に入らなかつたりと時間ばかり過ぎてゆく。わたしは焦り始めるがうまく行かない。娘たちがもう中年の婦人になつて和服を着て外で待つてゐるのを感じながら・・・。