大江戸

三月十七日(日)晴
未明、突如腹痛を感じて目覚め厠に呻吟する事小半刻。年に數囘かういふ事がある。下痢になる訳だが痛みに體を支えてゐられない程になる。其の後治まって再び眠る。朝早めに出掛けるつもりであつたが九時まで寝て予定が狂ふ。起きて臨書の後粥を食す。十一時前家を出で電車にて有樂町に往く。東京国際フオーラム地上で開催さる大江戸骨董市を見て廻る。二月の際に氣に入つたものの斷念した香炉を再び見出し六仟圓にて購ふ。また同じ店にて龍の渦巻く形の筆架と古銅製の水滴も買ふ。香炉は磁器だが文具は金工品である。机周りには余は陶器より木製や金属のものを好むやうである。それからもうひとつ安い水滴を他の店で買ふ。また、立派な仙台平の端切れが安かつたので、尺八を入れる袋物にしても敷物に使つても良ささうに思ひ購入。竹を刳り貫いた虫篭の佳品も欲しかつたが自重。
本當は骨董市の後谷中を歩くつもりだつたが遅くなり過ぎたので諦め、四時前仕事の面接に行く家人と有樂町駅前で別れて一人歸宅。早速文具を嶺庵に置き、香炉はリビングに飾る。今後、文具では金工の墨床と硯屏、それに竹の筆筒が欲しいが中々良いものに出会はないか、出会つても高すぎて買へない事が多い。文具を揃へれば書が上手くなる訳ではないが、好みのものが文房に並べば、其れだけ樂しく書に勤しめるといふものである。