再び、徳田のこと

四月一日(月)晴
昨年の秋に中学の同窓会があり、私は行かなかった。それはすでに書いた。その後ネット上でその時の写真を見る機会があり、また掲示板により私の居た三年A組のクラス会も開かれるということを知った。こちらには出てみようかと思っていたところ、先日同じ掲示板ですでにクラス会が開かれていたことを知った。これはショックだった。私のところに通知が来なかったことになる。意固地な私は、このことでもう二度と中学の同級生に会うことはないだろうと思っていた。ところがその後も徳田の夢をよく見る。言うまでもなく徳田は3Aの同級生であり、ずっと会いたいと思いながら三十年近く会っていない友だ。その徳田の姿はネット上に保存された写真に見ることが出来、元気そうで私はほっとした。ところで、掲示板を見ていたら3Aの第二回目のクラス会が連休前にも開かれるという。私は迷った挙句に同窓会の幹事にメールを打って3Aの幹事に私の連絡先を教えるよう頼んだ。程なく連絡が来て次回は五月末だという。私はクラス会には参加するが、その前に徳田に連絡したいから連絡先を教えて貰えないかとメールをした。すると徳田に聞いたら電話をくれとのことで幹事から携帯電話の番号を知らせて来た。
それから早や一週間が過ぎたが、私はまだ電話をしていない。最近めっきり電話をすることが減ったし、相手の状況や忙しさを考えると迂闊な時間にはかけられなくなるといったことが多い。そう思い始めると億劫になり、そもそも二十七年間音信のなかった相手に電話をかけて何をどう話し出していいのかが分からない。聞きたいこと話したいことはあるが、何だか電話だとうまく喋れない気がしてならない。そういう状態が続いたせいだろう、ここのところ数日続けて徳田の夢を見た。まず、いつも通り街中で邂逅して話し出し、五歳と二歳の息子がいるという話を聞くというもの。今朝はさらに、徳田の家を訪ねて行った。高校生くらいの女の子が出て来て、今いないと言う。そこに私もいるはずなのに、「今は何処に住んでいるのですか」と聞くと「市ヶ谷」と答える。しばらく会話が続き、今も徳田はHプロダクションに勤めていることや、その娘が母や姉にひけ目を感じていることを知る。暗にその二人がとても美しいことを知る。私はけっして醜くはないのに気分が晴れないような顔でいる娘に、君は十分魅力的だから、もう少ししたら明るく楽しい日々が待っているよと言って別れる。私はそれから大きなビルのロビーに入っていき、公衆電話で徳田に電話をしようとするが、鞄の中から徳田の名刺を取り出せずに焦る。諦めて移動すると昔の上司からズボンがまくれていることと靴下がずり落ちていることを指摘されて嫌な気がする。そして携帯電話で徳田に掛けると、向こうも携帯の番号なのに秘書らしい女性が出て応答するが、私はそれがさっきの娘ではないかと疑う。友人向けの枠としてとってある時間がもうないので出られないという。私はふと思い立って、同窓会の前に一度会ってゆっくり話したいから、もしその気があれば電話をください。もしそれには及ばないというのであれば、電話を下さらなくて結構です、と言って切る。なかなか徳田とは会えないもののようである。