儒醫

十一月十七日(日)晴後陰
『伊澤蘭軒』を讀む事日課の如し。その百十五迠進む。其の間蘭軒も亦儒醫たりし事を知る。奇遇と言ふべし。圖書館より岩波の鷗外歴史文學集の當該巻を借りて併せ讀んでゐるが、是に大いに助けられてゐる。全集本は漢詩漢文は白文の儘で読み下し文がないので、今までは大凡の意しか汲めなかつたのだが、此の本により読み下せるだけでなく註釈も精しいから理解の度が格段に違ふ。読む速度こそ流石に落ちるが、人名や書名も巻末に索引の形で注があるので、其の都度確認出來て便利である。但し、造本や活字は架蔵の全集本に一日の長があると言はざる可からず。其れは兎も角鷗外の史傳を繙く愉しみを此の齢迠取つて置けたのは幸ひである。